ヘッドもげgibsonの修理

今年ももう下半期に突入。

早い。早すぎる。

やらなければならないことが山積みです。

いろいろお待たせしている方々すいません。

頑張ります。

 

 

それにしても4月の工房移転以降、

これまで以上にリペア工房化している当工房。

以前はリペア:ギター製作:エフェクターの比率が8:1:1くらいでしたが、

ここ2か月は

ほぼ10:ほぼ0:0です・・・。

 

今後のことも踏まえ、正直いろいろ悩んでおりますが、

皆様のご迷惑にならないよう、そろそろ今後の方針を定めなければなりません。

また近いうちにご報告させていただく予定でおります。

 

 

そんな当工房、

設備的にはギター製作が可能なものがそろっておりますので、

リペアのご依頼も大掛かりなものが多く寄せられます。

その中でも定期的にお預かりする、ネック折れ、ヘッド折れ修理。

特に今回のものは、かなりの重傷でございました。

Gibson ヘッドもげ ヘッド折れ ネック折れ

Gibson Les Paul Traditional。2016年製でピカピカです。

今回はオーナー様自らのお持込でした。

当然なんですが、購入されたばかり。

掛ける言葉も見つからないとはまさにこのことです。

 

ネック折れはその折れ方や折れてからの時間によって、

修理の可否から作業難易度、工賃までいろいろ変わってまいります。

 

今回は折れ方こそ酷いものの、

折れてからすぐのお持込であったことから変形も最小限でしたので、

早速修理に当たらせていただくことになりました。

 

折れ、割れ、接着系の修理は、

初動の作業の精度がなによりも重要です。

お預かり直後、作業上邪魔なパーツ類を外し、接着面を確認。

想像以上にぴったりと行きません。

 

割れた断面の木の繊維がいろんな方向につぶれていて、

それらがササクレのようになって邪魔をしています。

 

ピンセットやデザインカッターなどを使ってそれらを整え、

強度に関係のないものは取り除き、

時間をかけて写真右のように、元の位置まで戻します。

 

木材同士の接着は、

接着面をクランプ等で圧着することが大切ですが、

今回のように分離していると、

そのクランピングもまぁ大変。

Les Paul ネック折れ

たとえばヘッドが完全に分離していなければ、

ヘッドの表裏から力をかければ問題ない場合が多いです。

 

ところが今回のような場合、

接着面はヘッドに対して斜めですから、

表裏から力をかけると、

その接着面が徐々にずれていってしまいます。

 

そのため、ヘッドの表裏とは90度異なる方向から

ズレを防ぐためのクランピングを同時に行います。

 

ヘッドの表裏ほどクランピングしやすい形ではないため、

ヘッド先端とグリップに特製のアタッチメントを取り付け、

その後「ハタガネ」という長いクランプで締めつけていきます。

 

全てのクランプは100%の力で締め付けるわけではなく、

それぞれの目的に応じてパワーバランスを調整します。

 

接着剤を塗布した後は木材が一時膨張しますので、

作業は時間勝負でもあります。

 

この作業は冷房をガンガンかけた部屋でやっても、

緊張感で汗が噴き出ます。

 

 

数日乾燥させたのち、

補強作業に移ります。

この画像は今回のものではなく、以前修理させていただいたものの補強の様子です。

ネック折れの補強はこのように、

一番力がかかる部分をいったん抉って、別の木を接着して強度を稼ぐ方法が一般的です。

 

ところが今回の個体は、この部分の厚みが元からやや不足気味で、

この補強方法では必要な強度が稼げないと判断。

 

このように進めました。

ヘッド、グリップにまたがるように溝を2本掘ります。

中央にはトラスロッドやそのアジャスト部がありますので、

そこを避けるような位置に配置。

 

ヘッドとグリップには角度が付いていますので、

溝自体は丁度中間的な角度で掘っています。

もちろん、2本の溝で角度を少し変えています。

 

切削自体はトリマールーターを使用していますが、

ヘッド裏やグリップ部分は平らではありませんから、

溝掘りのガイドを直接貼ることが出来ません。

そのため、画像左側のように大げさな土台を用意する必要があり、

それがなかなか時間がかかります。

それでも、失敗は許されない作業ですから、

どれだけ時間がかかっても、絶対に失敗しない方法で進めなければなりません。

 

溝が掘り終わると、

強度は一時的に激減しますので、

この後の作業を大至急進めます。

補強に使用するのはハードメイプル材。

ネックのマホガニーよりは硬い木です。

 

だったら、もっと硬いエボニーとか使えば良いじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、

補強材としては油分が多すぎて接着力が劣ります。

 

こういった補強方法に適した材って、意外と少なく感じます。

 

 

ハードメイプル材から掘った溝に対してピッタリの物を製作。

言うまでも無く、この加工精度は超重要です。

 

出来たら手早く接着。

乾いたらネックの形に合わせ成形します。

 

その後いろいろな下準備を経て、

塗装に入ります。

ネックの強度と言うことで考えると、

補強をしっかり入れて、最低限の保護塗装を施せば問題ありません。

 

ここから先は、ご依頼主が希望する見た目の仕上げを行っていきます。

 

今回は、出来るだけ修理痕が目立たないようにというご依頼でしたので、

画像の様な塗装を施しました。

 

画像左は、下地の塗装がされている状態。

このままでは補強材が丸見えですので、

一旦仕上がりより少し薄い赤系の塗料で完全に隠ぺいしてしまいます。

 

その後半透明の塗料を使って、

その上から周囲となじませる色合わせ作業を行います。

 

もちろん、新しく色を乗せた部分は木目が見えませんので、

周囲と完全に同化するわけではありませんが、

出来るだけ違和感が少なくなるよう調色と吹付を繰り返し、

徐々に仕上げていく作業です。

 

1発でピッタリ行くことは少ない作業ですが、

ある程度経験がある方であれば、

このチェリーレッドは比較的色合わせしやすいカラーでもあります。

一番難しいのは、白系かなぁ。

 

この後、トップコートを吹き付け。

10日程乾燥させ水研、バフ仕上げを実施しました。

仕上がり、こんな感じです。

違和感の少ない仕上がりになりました。

 

このギターはヘッドがもげてしまっていたので、

当然ヘッド表にもクラックがあったのですが・・・。

こちらもばっちりと割れ目を処理しています。

 

お客様お持込の弦は、11-49ゲージとやや太め。

それでも強度的には全く不安はなさそうです。

 

全体的にしっかりと再セットアップし全ての作業が完了となりました。

 

Gibson Les Paul Traditional ヘッドもげ修理完了

当工房ではネック折れ修理後、

強度の確認のために、

弦を張り、さらにネックハンガーにかけて1週間程様子を見ます。

 

これで問題が無ければ、

通常使用環境で再発することは無いと思います。

 

当たり前なんですが、

ネック折れの修理のご依頼は、

直して初めて私はその楽器の音を聞くことが出来ます。

 

長期間に渡って手掛けさせていただく作業でもありますので、

無事作業を終えた安堵感も手伝ってか、

私が直したギターは、

いつもすげぇ良い音に聞こえます。

 

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静岡県島田市のギター工房です。
カスタムオーダーギター・ベースの製作、リペアとカスタマイズ、オリジナルエフェクターなどの設計・製作をしています。

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