当工房には
「こんな状態なんだけど治せますか?」とか
「こんなこと出来ますか?」とか、
そんなお問合せも多く頂きます。
詳しくお伺いすると、
どこか他のところで断られた方とか、
引受先が見つからなくて苦慮している楽器店さんからのご相談。
私もいつもナット交換やフレット交換では飽きてしまいますので(コラ)
変わったタイプのご依頼が寄せられると刺激的です。
今日はこのところ手掛けたものの中から、
ちょっと特殊な修理例を
3件ご紹介いたします。
フェンダージャズベース。
バインディングブロック仕様のメイプル1Pネックが素敵。
と思いきや、ネック裏には大きな亀裂が!?
症状は思いの外酷くて、
折れた時の衝撃で2フレットが欠損。
しかも割れてから数か月放置されていたということで、
割れ面もかなり変形してしまっています。
それでもまずはくっつけてみるしかないので、
いろいろ工夫しながら割れ面を接着。
無くなってしまった2Fは新調し、
こうなりました。
幸い接着だけで強度は問題が無かったものの、
割れ面付近はウレタン塗膜のチップや段差が酷く、
そのまま演奏すると血が出そうです。
そこで割れ目に粘度の低い樹脂等を流し、
丁寧に研磨して整えました。
木の割れ目は見えますが、塗装表面はツルツルな不思議な状態。
新しいフレットも周囲のフレットに合わせしっかりとすり合わせし、
無事ちゃんと使えるように復活しました。
ところで聞き忘れたんですが、
いったいどうすればネックがこんな割れ方をするんでしょう?
続いては、
なかなか難しかったです。
ネック差し替えのご依頼。
EDWARDSのボディに、
ZONのグラファイトネックを取り付けたいというご相談。
困ったことに、ネックとボディで形状が全く合いません。
そこでまずはボディのネックジョイントキャビティを加工。
側面、底面をほんのわずか広げます。
何のためかというと、
ZONのネックは元のキャビティより大分細いため、
キャビティを小さくする必要があります。
より正確な作業を行うために、
今回は一旦キャビティを埋めてしまうことにしました。
元のキャビティ内には塗料等が残っていて、
そのままでは綺麗に埋まりませんので、
一旦広げて壁を綺麗にし、埋めやすい状態にしました。
埋め木を綺麗に製作したらしっかりと接着。
接着剤が乾いたら、
新しいネックに合わせてキャビティを掘りなおします。
新しくベースボディを作るわけでは無く、
既にピックアップやブリッジの位置は決まっているものですので、
新しく掘るキャビティの位置、寸法は慎重に割り出します。
さらに難関は、
ジョイントビスの位置。
木のネックであれば、
ボディのビス穴に合わせてネック側に開け直せば一件落着なんですが、
相手はグラファイトネック。
ネック側に開いているビス穴に合わせて、
ボディ側に開け直す必要がありました。
結果はご覧の通り。
なかなか見たことの無いカスタム感ですね。
これうまく行って良かったですが、
もう1回やって成功するかと聞かれると怪しいです。
併せてお持込いただいていた
ピックアップやプリアンプを配線し、
セットアップして無事ご返却させていただきました。
最後は個人的にグッと来たカスタマイズ。
おそらく80年前後製のFenderプレシジョンベース。
使い込み感が凄く、
さらにはオーナー様の手による様々なカスタマイズ痕が散見される、
歴戦の勇者ですね。
おそらくオーナー様は、
このリアP.U.周り(これも手で掘られたキャビティの様子)のカスタマイズ痕を
隠されたかったのだと思いますが、
ブリッジにかかる新規デザインのピックガードの製作依頼を承りました。
Fenderの定番ギターやベースに、
オリジナルデザインのピックガードを乗せるのは、
元の印象が強すぎるだけに、
非常に難しいミッションです。
今回はご依頼主のご希望を元に、
オリジナルピックガードのラインを最大限尊重した
新規デザインを考案。
ビス位置も、元の位置を使えるところは出来るだけ忠実に拾っています。
見たことないプレべになりましたが、
とても良いと思います!