ピックガードもハンドメイド

長い間放置していてボサボサだったので、

床屋さんで髪を切ってもらったら、

ジョン・ストーンズみたいになった今日この頃。

 

まぁ、前回切った時はちょっと攻めすぎて、

完全にロベルト・フィルミーノになり、

方々で笑われましたので、

今回は大分ましですね。

 

 

今日のご依頼は、

ストラトのピックガードをベッコウカラーに変えたいというもの。

 

ストラトほどメジャーなギターであれば、

既に形が出来ている交換用のピックガードが販売されていますが、

実はすんなりと交換できることは少ないです。

 

ネジの位置が全てピッタリ合うことなどは稀で、

ネック部分やブリッジ部分の形状が合わないことも多々あります。

 

当工房では

市販のピックガードへの交換も行うことは出来ますが、

ピックガード側、又はボディ側に追加工が必要なことも多く、

そこの工賃を考えると、

むしろ1から削りだしたほうが精度も高く、安上がりだったりします。

 

 

というわけで今日は、

板材から削りだす、

ストラトキャスターのピックガード製作の様子をご紹介します。

Fender Japanの62タイプストラト。

パール柄のピックガードが付いていました。

 

用意したのはベッコウ柄のピックガード材。

 

ここから削りだす方法は沢山ありますが、

最もアナログなのは、

元のピックガードをなぞって、その通りに切って加工。

 

マイナーなギターでしたらそうすることもありますが、

今回は幸い工房で用意してあったピックガード型が使えそうです。

昔、同様のご依頼を承った時に作ってあったものですね。

まずはピックガード材を型より一回り大きめに切りだします。

糸のこ盤を使いました。

 

その後両面テープを使って型と貼り合わせ、

ハンディトリマーに目地払いビットを取り付け、

それをお手製のトリマーテーブルにセッティング。

型にならって加工をすれば、

型ぴったりのピックガードが出来ます。

 

実はこれ結構怖い作業で、

ピックガード材は柔らかいため、刃が喰いやすく、

慣れないとピックガードが飛んで行きます。

 

良い子は真似しないように。

 

削られたピックガードの外周は真っ直ぐで味気ないので、

おしゃれな面取り作業に移ります。

私のトリマー刃コレクションの中から、

刃の部分がが45°になっているビットに交換。

 

このビットで外周部分を斜めに削り落とします。

Fenderにならって、

ブリッジ部分とネック部分は斜めにおとしません。

 

今回使用したベッコウ柄のピックガード材、

実は4層構造になっていて、

エッジを斜めに落とすとその4層が縁取りの様にあらわれ

とたんにそれっぽくなります。

 

こうして大まかな形状が完成しました。

もう雰囲気はすっかりピックガードですが、加工はまだまだ続きます。

 

型を外す前に忘れてはいけないのが、

ネジやパーツ穴位置のマーキング。

型にあけてある穴位置をピックガードに正確に写しておきます。

 

ストラトのピックガードには特に沢山の穴が開いていますが、

その中で最も加工が面倒なのが、

レバースイッチの稼働部分。

 

ここはお手製のテンプレートと、

トリマーにセットした極細刃を使って加工しました。

そしたらビス穴やらパーツ取り付け穴を

卓上ボール盤で穴あけ。

穴サイズがいろいろなので、間違えないように慎重に。

 

その後ビットを皿錐状のものに交換し、

皿ネジ穴を皿切り加工します。

 

これだけの工程を経て、

ようやく全ての形状加工が完成しました。

 

これら作業、

それぞれの作業はそれほど難しいわけではありません。

ただ作業工程が多く、

それらすべてを正確にこなすのは中々大変です。

 

ここまでの作業であれば、

例えばNCマシンで抜いてもらった方が圧倒的に楽でしょう。

 

ただ木製品であるギターはとにかく誤差や個体差が多いため、

それらにしっかり対応し、

精度の高いピックガードを作る為には、

手作業の方が圧倒的に有利です。

 

 

そして最後に、

NCマシンでは出来ない最後の仕上げを。 

45°に面取りした外周は

ビットで切削しただけの状態です。

良~~く見ると刃の痕が残っています。

 

これを手研磨で丹念に取り除き、

コンパウンドで磨き上げて仕上げました。

 

このほんの3mm幅程度の部分の仕上がりで、

ピックガード全体の印象はもちろん、

取り付けられた楽器全体の雰囲気は結構変わるんです。

 

 

1枚のピックガードが出来るまでに、

これだけの手間暇がかかります。

 

毎回「効率悪いなぁ」と思いながら作業してますが、

そうして作ったもののカッコ良さも身に染みているだけに、

手が抜けない部分です。

 

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静岡県島田市のギター工房です。
カスタムオーダーギター・ベースの製作、リペアとカスタマイズ、オリジナルエフェクターなどの設計・製作をしています。

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