ネック(ヘッド)折れ修理

「ご~にんばやしのふえたいこ~♪

きょ~おはたのしいくりすます~♪」と、

もうすぐ4歳になる娘が楽しそうに唄う今日この頃、

明日4日より3日間、

Y.O.S.ギター工房は臨時休業を頂きます。

 

営業再開は3/7より。

ご迷惑をおかけいたしますが、

よろしくお願いいたします。

 

 

さぁ今日は、

大がかりなギター修理の代表格、

ネック折れ、ヘッド折れ修理の様子をご紹介です。

Gibsonに代表される、

ヘッドに角度が付いているタイプのギターは、

倒した時などの衝撃がヘッドの付け根に集中することが多く、

このようなトラブルが後を絶ちません。

 

私も折れる瞬間に2度出くわしたことがありますが(私の楽器ではありませんが・・・)

その光景は、本当にスローモーションのように見えるから不思議です。

 

こんな悲劇、起こらないに越したことは無いに決まってますが、

Gibsonタイプの楽器を所有している方にとっては、

いつ起きても不思議ではありません。

 

そうなった時に覚えておいていただきたいのが、

折れてしまったら出来るだけ早くリペアショップに持ち込むこと。

 

時間が経てば経つほど

折れた両側がそれぞれ変形し、

接着精度がどんどん悪くなっていきます。

 

断面がヘッドに対して水平方向であれば、

接着のみで十分な強度が確保できることもあります。

 

逆に一番やってはいけないのは、

身の回りにある接着剤で何とかくっつけてみようとすること。

 

このような接着作業は経験とスキルが重要ですので、

プロに任せた方が賢明です。

 

一度接着剤が塗られてしまった箇所の再接着作業は、

困難を極めます。

 

 

今回も、

修理申込み頂いたその日のうちに接着作業。

 

おかげで写真を撮り忘れてしまいましたが、

断面は綺麗で、接着の苦労はそれほどありませんでした。

 

 

今回の折れ方は

接着だけではやや強度に不安もあったため、

補強を入れさせていただくことになりました。

写真が分かりにくいかもしれませんが、

補強を入れるため、

左の様に、患部周辺を一旦カーブ状にえぐります。

 

そして補強材を同じカーブ状に成形し、それを接着します。

 

 

えぐったネックをそのまま放置するとまた変形が始まってしまいますので、

補強材を製作し接着するまで、

こちらもスピード勝負。

 

カーブ状の2面をピッタリに成形する作業は、

非常に難易度の高い加工です。

 

それでも、

ヘッド側、ネック側共に高い強度を保つ補強方法としては

これがベストです。

 

たまに、

木目を垂直に断ち切るように

四角くえぐって補強を入れているものを見かけますが、

木材の木口面の接着は、強度を稼ぐことが出来ません。

接着面は、

出来るだけ木目と平行に近い方向で確保したいです。

 

この作業をしっかりこなすと、

折れる前より強度は増します。

 

 

接着面積はそれほど広いわけではありませんが、

クランプの数も出来るだけ多く。

この接着作業が、

このギターの将来を決定付けます。

 

接着したら、

しっかり乾燥させて成形に移ります。

カンナや小刀で形を整えたら、

研磨で生地を整え、周囲の塗膜となじませます。

 

その後補強部分に塗装の下地処理を行ったのが右側。

 

一応これで補強的な作業は完了。

あとは見た目を仕上げていきます。

Gibsonはラッカー塗装されているので、

修理に使う塗料もラッカーでなければいけません。

 

左は下地の塗膜を仕上げたところ。

そこから一旦明るめの色で塗りつぶし、

その後シースルーレッド系で濃さを調節、

周囲と色味をそろえていきます。

 

違和感が無くなったらクリアを重ね乾燥、

水研からバフがけをし、

グロスで仕上げます。

 

こちらも文章で書くとこれだけですが、

冬場のラッカー塗料は乾燥も遅く、

全行程で3~4週間かかります。

 

そうして仕上がったのがこちら。

ヘッドトップには

折れた時の痕跡(塗料の割れ)が残っていますが、

こちらは強度には関係ないのでそのままとしました。

 

 

一応このような流れが、

ネック折れ修理のセオリーです。

 

後は折れ方、箇所、

トラスロッドの入り方、

折れてからの時間、

断面の精度、

ご依頼主のご希望、

こういったものを総合的に判断し、

その個体にあった修理を施します。

 

木工から塗装まで求められる技術も高く、

駆け出しのリペアマンにとっては大きな山だったりもします。

(私もネック折れに関しては酸っぱい思い出が沢山)

 

 

こうして無事修理は完了し出荷。

ホッとしたのもつかの間、

翌日には新たなネック折れ患者様が運び込まれてきましたとさ。

 

Gibsonめ・・・・。

 

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静岡県島田市のギター工房です。
カスタムオーダーギター・ベースの製作、リペアとカスタマイズ、オリジナルエフェクターなどの設計・製作をしています。

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