フレット交換の実例3 : 1963年製Fender Stratoctasterのフレット交換

1月4日、当工房仕事はじめの日、

開店早々にご来店くださった最初のお客様、

私の2016年は、

このギターをお持込いただいたところから始まりました。

 

こんな刺激的な1年のスタートも、

なかなかありませんぜ。

1963 Fender Stratocaster
1963 Fender Stratocaster

もはや説明するまでもありません、

Fender社のStratocaster。

これはその中でも人気の年代、1963年製の個体です。

写真だけでも

私はよだれが止まりません。

(今回のリペアとは全然関係ない写真を沢山撮っているのは内緒です)

 

 

ただ古いだけでは無い、人気、実力を兼ね備えた、

ギタリストであれば誰でも一度は手にしたいこの名器。 

ご依頼主は最近これを入手されたそうで、

20年以上もほとんど弾かれず埃や汚れだらけのものを

何とか弾ける状態までオーバーホールされたのだそうです。

 

全体的にパーツ類もオリジナルの物が多く、

年代の割には状態も良好です。

 

ただフレットに大きな摩耗があり、

特にローポジションの演奏性に難がある状態でした。

もちろん古いものですから、

ネック自体にもさまざまな細かい狂いが出ています。

 

すり合わせでもなんとかなるかなぁと思いましたが、

フレット自体はかなり高さが無くなってしまうであろう状態。

 

ご相談の結果、とにかく実用性を重視されるとのことで、

それじゃあフレット交換しましょう、

ということになりました。 

フレット交換のメリットの1つは

前回のブログまででもご説明してきたとおり、

フレットを抜いた後に指板面の形状修正を行うことで、

ネック自体の問題点も同時に修正出来ること。

 

ところがFenderがこの63年前後から採用をはじめた、

通称「ラウンドローズ」と呼ばれる指板は写真の通り、

非常に薄い指板が特徴。

大幅な指板形状の修正は、出来るだけ行いたくありません。

 

また指板には、

このギターの歴史を物語る、演奏痕もあり、

これは是非残してほしいというご依頼主の想いもあり、

今回の指板修正作業は最小限にとどめることにしました。

 

フレットを抜いた後、ダメージが出ているフレット溝を

1本1本丁寧に修正。

あたらしいフレットに合わせ、溝の幅も調整し直します。

 

その後、本当に最低限の研磨作業を行い仕上げたのが右上、

そしたら

あたらしいフレットの下準備と打ち込み、

フレットエッジの処理、

入念なすり合わせを経て、

フレット作業は完了です。

 

この年代、指板材はもちろんハカランダ。

当時のフェンダーギターの指板には、

指板にはあまりふさわしくない、板目材も多く使われていましたが、

この個体は本柾目のAAAAAグレード。

メイプルも現代の物よりずっと年輪のピッチが細かく、

ずっしりと詰まっています。

いいなぁ60年代。

 

フレットサイズは、

ビンテージサイズより一回り大きいものに変更しました。

 

いや~しびれましたね(手倉森監督風)

摩耗しきっていたナットも

あたらしいフレットに合わせ新調しました。

 

こちらは伝統のボーンナット、

ほんのり黄ばみのあるノンブリーチ材です。

最近はこのタイプの流通量も増え、

その品質も素晴らしいので、

オイル系ナットをご希望の方には強くおススメしています。

 

ご覧のとおり、四角いブランク材に正確な寸法を罫書き切削、

その後弦溝の加工をし、磨き上げたのが右側。

ナットも丁寧に仕上げると、立派な装飾品となります。

 

その後は弦を張り、

セットアップの作業。

 

7.25インチ指板に09ゲージの弦を張り、

12Fで弦高を1mm程度にセッティングしてほしいという、

非常に技術力の問われるご要望でした。

1963 Fender Stratocaster

そうして作業が完了した楽器は、

価値のある骨董品から、

立派な楽器へと生まれ変わりました。

 

オーナー様は、

これをメインのギターとして

バリバリ使っていかれるそうです。

 

素晴らしい。

 

 

お返しする前に調べてみたら、

なんとこのハードケースも

当時の物そのまま。

 

50年以上も前にアメリカで作られてから、

今までどんな運命をたどってきたのでしょうか。

想像するだけで楽しいですね。

 

 

と、4回にわたって

いろいろなパターンのフレット交換をご紹介してまいりました。

もう本当に楽器ごとで作業の様子が違うのがお分かり頂けたかと思います。

 

ギターの性能の大きく左右する部分であるだけに、

修理を通じてそれが自分の思い通りにコントロールできた時には、

何とも言えない充実感が得られます。

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カスタムオーダーギター・ベースの製作、リペアとカスタマイズ、オリジナルエフェクターなどの設計・製作をしています。

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