フレット交換を考える

昨日は朝から

お客様とオーダーギターのお打合せ。


そのお客様がオーダーの参考に

持参してくださったギターはなんと、

1965年前期製のStratocaster。

トランジションロゴ、ラウンド指板のPreCBS。


音はさすがのビンテージですが、

そこでもやっぱり木を見てしまう私。

ネックはいわゆる普通の板目のメイプル材ですが、

その木取りは明らかに、

樹齢を重ねた大木のもので、

現代ではなかなかお目にかかれないものでした。

当時はきっと、これが当たり前だったんでしょうね。


50年前と比べると、

様々な点で技術向上が見られるギター製造ですが、

木材事情ばかりは反比例しています。


やはりまずは素材が大事と、

相変わらず木材ばかり物色している日々です。



今日は先日お預かりした1件の印象的なリペアをご紹介。

Gibson Les Paul Customのフレット交換です。

Gibson LP Custom
Gibson LP Custom

そもそもは、

フレットの浮きがすごいので

どうにかなりませんか?というご相談でした。


上記写真の通り、

通常ではあまり見られない相当なフレットの浮き。

その隙間にもすでに多くの汚れが入り込み、

このフレット自体を生かすより、

交換した方が精度の高い作業が出来ると判断しました。


確かにエボニー指板は

フレット浮きが起こりやすいものではありますが、

このギターのフレット浮きの原因は

それだけではないようです。


作業を進めるうちに確信したのは、

以前リフレットされた時の作業が

あまりにおざなりであるということ。


通常フレット交換は、

以下のような手順で進めます。


元のフレット抜き

フレット溝の修正作業


指板形状の修正作業

新しいフレットの打ち込み


フレットエッジの処理


フレットのすり合わせ


新しいフレットに合わせたナットの新規作成

弦張り・全体調整


特に新しいフレットを打つまでの作業は、

経験と判断力がものを言う重要工程で、

ここをおろそかにしてしまうと、

一見綺麗にリフレット出来ていても、

その状態は長持ちしません。


私がこのギターのフレットを抜いた時の、

指板の状態は、燦々たるものでした。


その修正作業には膨大な時間がかかりましたが、

むしろこのギターが私のところに来てくれて良かったと思い、

万全の作業をさせていただきました。

フレット交換完了です
フレット交換完了です

近年はリペアショップの数も増え、

インターネットで検索をすると、

信じられないほど安い工賃で作業をするお店もあるようです。


ただ、私の感覚からすると、

とても安請け合いは出来ない作業です。


フレット交換作業は

その楽器の寿命やサウンド、演奏性に大きく影響します。

過去に未熟なフレット交換作業により、

指板の交換を余儀なくされてしまったケースを見たこともあります。


ギターを演奏している限り、

いつかは必要となるこのリペア。


高いとお感じになる方もいらっしゃるかもしれませんが、

愛機にとっては大手術。

是非信頼できる技術者を見つけていただくよう、

お願いいたします。

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静岡県島田市のギター工房です。
カスタムオーダーギター・ベースの製作、リペアとカスタマイズ、オリジナルエフェクターなどの設計・製作をしています。

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